VISIONというカタチ

理想を追求するウエアとして、今年の春夏ウエアから展開が始まったのが「VISION」シリーズとなる。文字通りのこれからの展望を表現すべく、その時点での「最高峰」を目指している。 このシリーズが誕生した背景として、昨今の多様化が挙げられるだろう。ユーザーレベル、デザイン性などニーズも様々となるが、パールイズミの「基本」を作り、より多くのユーザーに使ってもらうための新たな挑戦が始まった。すでに構想から3年の月日が経っている。より良いもの作りは当然だが、今までになかった「新しい基準」を設け、よりユーザーに寄り添った開発が求められたのだった。その中で、まず、着心地は基本ではないだろうか。着心地が良ければ長く着ていられる。肌触りが滑らかなことも理屈ではなく、その良さを「感じる」のだ。そんな観点は、「大きなテーマ」として、盛り込み、開発が始まった。 パールイズミの「コンセプトモデル」とも言えるVISIONは、トライアンドエラーを繰り返し、全アイテムの開発の礎となるべく、その注力度の高さには、強いパッションを感じた。まず、ここで「あるべき姿」を具現化できなければ、これからに期待ができない。パールイズミのもの作りにおいても、その「意気込み」を象徴するラインナップとなるのだ。 パールイズミのウエアとは、多くの方に満足してもらえるように作るウエアであり、そのウエアはクウォリティと「適正」な価格を守らなければいけない。パールイズミにとっては、絶対条件となる。そんな中のVISIONだが、このアイテム自体のターゲットは、「ある程度乗っているユーザー」となる。ただ、この開発においては、VISIONありきではなく、開発段階に培われる新たな技術が、「水平展開」されることにある。もちろん、その時点の「集大成」でもあるVISIONの完成度は極めて高く、「最上級」と言っても良い。 VISION 2019FW

理想の具体化

では、どんなものが出来上がったのだろうか。キーワードは、「FIT, FABRIC, DETAIL」となる。まず、前提条件として、使用温度帯「0℃」としている。言い方を変えれば、厳寒の環境下において使用可能にしているということだ。冬物ウエアとして、その厳しい条件をクリアしながら、誰もが感じるフィット感や触り心地と質感、そして、パールイズミならではの細部に至るまでのこだわりの作り込みが、ユーザー満足度を上げている。 ①ジャケット 冬物のジャケットは厚手で硬い、そんなイメージがあるのではないだろうか。防寒性ということを考えると「仕方がない」と思っていた。動きやすさも落ちるだろうと。それらを根底から覆したのが、このVISIONジャケットだ。薄手で動きやすい作りは、異次元の仕上がりとなっていた。 VISION 2019FW この動きやすさは、まず、素材にこだわったことが挙げられるだろう。触感の良い柔らかさと高いストレッチ性能を持つイタリア製の素材を採用していることだ。次に、造りを二重構造にしていることで得られている。外側と内側素材が独立しているため、動きに制限がない。これらの絶妙な組み合わせにより、突っ張りのない柔らかいフィット感が完成した。また、同時に、ウエアを大きく作る必要もなく、自然なタイトフィットを実現、今までにはなかった、着心地が出来上がった。「薄手」に仕上がったこのジャケットは、VISIONウィンターアンダーと組み合わせることで「0℃」対応となっている。 そんなジャケットには様々なこだわりが詰め込まれていた。寒さを感じる部分の裏側には、吸湿発熱素材「コンフォヒート」を配して、寒さを軽減している。ジャケットの裏側の縫い合わせは、背広のスーツと同じように内側に折り込むことで身体に当らないようにしている。こだわり過ぎだろうか。究極の着心地を追求している。 他にも、バックポケットは、雨上がりなどの泥はねに対応し、汚れの落ち易い撥水素材で簡易防水となっている。完全防水とはせず、水抜き穴も設けている。手首は動かしやすいようにルーズフィットとしている。このカット形状も何度も試し決定している。裾後部は着用時のシルエットをきれいに見せるため、シリコンテープを浮かせるようにし、ずり上がりにくくしている。背面内側の中央部分をメッシュとすることで、バックポケットにモノを入れた時に伸び過ぎないようにしている。 そして、見た目も重要だ。一見「黒一色」だが、イタリア製の生地は、黒一つにしても何種類もある。何度も試作を繰り返し、色合いを変え、シンプルな黒の中にも絶妙な切り返しが、高級感を醸し出している。 ②タイツ タイツの特長は、ジャケット同様、こだわりの作りや素材からできているので前述の通り、申し分ないものとなっている。 まず、フィット感の良い仕上りは、ジャケットと同様だ。ビブストラップは、カットオフの薄く、柔らかく、「吊る」感じのない優しいフィット感となる。また、タイツの内側にもコンフォヒートを腿、下腹部、腰など寒さを感じるところに配し、防寒対策としている。そして、各部位のカットにもこだわりが見られる。腰には中央のつなぎ目を無くし、柔らかなフィット感と動き易さを出している。膝回りも関節横の面に縫い目をなくし、ペダリング時の抵抗を抑え、動きやすさを考えたカットとなっている。裾回りには、ジャケットのバックポケット同様の撥水素材を採用し、汚れが落ちやすいにしている。 VISION 2019FW ③グローブ このシリーズの注力は、メインとなるジャケットやタイツだけではない。グローブにこそ、その神髄が表れていた。グローブは極めて手間のかかるアイテムだ。その仕上りはメーカーの技術力が出る。 グローブは、「小物」と言われるが、部材の多さは、ジャケットやタイツの比ではない。よりフィット感を高め、「使いやすさ」を追求している。グローブに求められる機能は操作性だ。冬場0℃でもより使いやすいように様々なこだわりが随所に見られる。まず、手に取ればすぐ分かるが、最初から軽く指先部分が曲がって「立体」になっている。ちょうど「握手」をするかのような形状だ。また、指1本ごとの角度も変えている。これはハンドルを握る形状であり、より操作がしやすく作られたものだ。本来、防寒ということでは「厚手」に作られがちだが、操作性が落ちるためそのバランスには葛藤がある。 VISION 2019FW ④アンダー&ソックス アンダーやソックスは脇役かもしれないが、そのこだわりには余念がない「名脇役」に仕上がっている。これらがあってのジャケットやタイツと言っても過言ではないだろう。 アンダーの完成度も高い。「良く伸びる」と一言では足らないくらい極めて高いストレッチ性能を持ち、フィット性に優れている。そして、無縫製の編み方が着心地を高めている。また、背面の汗をかく部位には、凹凸のあるメッシュを配し、保温性だけではなく、発汗性も配慮し、高い快適性を持っている。肘の内側などもやはり蒸れる箇所となるため、メッシュ仕様としている。ソックスも、しっかりデザインを合わせ、ふくらはぎ下までのロングタイプで疲労を抑えるサポート機能を持たせている。母指球周辺の横アーチサポートと踵の引き上げサポートの機能を持っている。 VISION 2019FW

これから

VISIONはVISIONのためだけではなく、全アイテムのためにも存在するリアルなコンセプトモデルだ。開発時に培った多くの技術は数知れず、それらの技術が他のモデルにも、すでに活かされている。VISIONはパールイズミの開発の象徴であり、夢のスタンダードでもある。そして、1シーズンや1モデルに留まらない継続されるプロジェクトが「VISION」だ。