ロードバイクとの出会い

下山氏レーサーの選手だった頃、クロストレーニングの一環でバイクに乗っていた経験があった。その時は本格的なロードバイクではなく、シューズもバイクシューズではなかったが、昨年ふらっと入ったTREKストアで気に入ったバイクがあり、即購入。それがチームオールージュとして初めて参戦したエンデューロレースの直前だった。

それでも、レーサーのスピードに対する研ぎ澄まされた感覚と持ち前の肝っ玉の大きさで、ロードバイクに乗り始めたばかりでもエンデューロのスピードレースに全く恐怖感はなく、逆にゾクゾクするほどの楽しさを覚えたという。

画像 トーク

萩原氏は前職でトライアスロンのレースに出ようという企画が持ち上がったのがきっかけだった。「全く運動をしていなかったので、一人で3種目は無理でした。なので、リレーで出ようということになり、僕の担当がバイクパートだったんです」早速練習で乗り始めたところ、すぐにバイクに魅了された。それまで運動していなかった身体がどんどん絞れ、乗れば乗るほどタイムも速くなり、楽しくて仕方がなかったとのこと。

そして、その企画全体の統括を一任されたのが山本 良介選手。借り物のバイクではなく、自分のバイクが欲しいと考えた萩原氏は、山本選手に相談し1台目の愛車となるTREKを購入した。ターゲットだったホノルルトライアスロンまでは、会社でローラー台を漕ぎ、週末は外で乗り込む生活。自宅から荒川が近いこともあり、一人で乗りに出かけていたという。

バイクに乗る時間とは?

激務で出張も多く、プライベートの時間がほとんどない下山氏。外に乗りに行く時間が少ないため、ローラー台とワットバイクをオフィスに置き、水泳とランニングも取り入れて、効率良くトレーニングをするためには手段をいとわない。レース前はファミリーサービスの旅行先にもローラー台を持参し、ホテルのテラスで少しでもペダルを回す時間を捻出していることには驚きだ。

ローラー台の画像

なぜそこまでしてバイクに乗り続けるのか。「純粋にバイクが面白いんですよね。一人で会社でローラー台やワットバイクに乗ってペダリングを意識し、心拍数を上げて必死に漕いでいると、一瞬仕事のことを忘れることができて頭の中がスッキリするんです。大人になってこの時間が持てることは貴重ですね」

萩原氏は「バイクに一人で乗っている時間、頭の中が空っぽになり、無心に慣れるのがすごく楽しかったんです。とにかく人に気を遣わずにのめり込めることが見つかったのが嬉しくて、一人で100km近く乗ることもしょっちゅうでしたね」

就業前の早朝、週末に時間を作っては、とにかく楽しみを求めてバイクに乗る日々。萩原氏にもバイクに乗ることの何が楽しいかと聞いてみると、「うーん、この楽しさは言葉にならないですね(笑)。男性は乗り物が好きで、さらにそれをいじれるのがいいのかもしれません。特に早朝はまだ街が起き出す前のいつもと違う表情が見られて、すごく気持ちいいんです」と笑いながら語る。

バイクを乗り始める前は、トライアスロンリレーのバイクパートの距離が40kmと聞いた時、その距離の長さが信じられなかった。それが今ではその距離を大きく超え、自分の脚で遠くに行けるこの”乗り物”に夢中だ。

レース会場後ろのカット

レースでは、楽しさと辛さが共存する。エンデューロは決められた時間内でサーキットを何周できるかを競うレース。そこには緻密な戦略と的確な状況判断が要され、ただ走るだけでは面白くない。普段走ることのできないサーキットを、速い集団に乗ってドラフティングしながら走るエキサイティングさや仲間とタイミングチップを繋いで高順位を目指す楽しさ、かたや自分一人のミスがチームの順位に直結するという緊張感や、高心拍でもがく辛さ。信頼するメンバーとのレースは使命感がある。

レースを日常の中で意識する生活はいつぶりだろうか、と生活に潤いやハリが出て、日々のモチベーションになっているという。

走行
走行

企業チームを立ち上げた目的と経緯と今後の取組み

下山氏が経営するオールージュに入社する前から、二人は仕事の関係でSNS上で繋がっていた。その投稿で、同時期に同じTREK社のバイクを購入しているということを知り、機会が合えば乗りに行こうという話をしていたところ、縁あって萩原氏がオールージュに入社。間もなくして、時計ブランドを扱うオールージュはブランドイメージに合った山本 良介選手をサポート選手として迎えることを決める。

山本さんトーク

バイク好きな下山氏と萩原氏は、トライアスロンの3種目の中でもバイクに精通している山本選手と共にバイクに乗る機会を作りたいと考え、チーム結成に至った。最初は6名からスタートしたチーム。大会にエントリーし、ウエアも揃え、初めてレースに出たのが2016年8月の筑波エンデューロ。活動の様子をHPやSNSで紹介し始め、一年経った今メンバーは倍の14名になった。その中には実業団サイクリストも含まれていて、山本選手と並んでチームメンバーに良い影響を与える存在だ。

額縁

類を見ない時計ブランドのスポーツチーム。グローバルで高級時計がアスリートたちをアンバサダーとして迎えているが、ただ選手をサポートするだけではなく、いわゆる「スポンサーサイドの経営メンバーと共にバイクに乗りながら関係性を構築していく」という密着型サポートスタイルを実践している。そうすることでお互いの現状がよく理解でき、サポートに熱い想いが宿るようになる。それが互いにとって良好な状態を作り上げられている大きな要素だ。

また、人材採用にあたっても、バイク好きな人がオールージュに興味を抱いてくれれば自転車を通じて人となりが理解でき、コミュニケーションのツールにもなると考える。今となってはチームオールージュのSNSを見ている人から「一緒にやりたい」という声がたくさん届いているそう。チームを立ち上げて一年、時計の実売に直結させることよりも、そういった人の繋がりを拡大していくことがあらゆる可能性に直結するのでは、と語ってくれた。

2017年2月、チームのレベルの底上げを図るため宮古島で2泊3日の合宿を行った。結束力も高まり、2017年5月に出場した筑波エンデューロで企業対抗(男女混合)2位、初めての表彰台に立つことができた。

受賞カット

そんなオールージュが目指す2017年の目標は、レースで優勝すること。やるからには個々の役割を全力でまっとうしチーム一丸となって結果を出したい。そしてその中でもバイクに乗る楽しさと、チームとして楽しむことを忘れない。

それら全てを、自ら機会を創り出し、それによって自らも変わり、たくさんの出会いがあった。結成して一年で得たものをベースに、これからのチームオールージュの多方面に渡る活躍から目が離せない。