複数のプロジェクトに身を置き、
スポーツの輪を広げる

Pearl Izumi(以下PI):現在、北川さんはスポーツ&フィットネスの分野で多方面に活躍されています。弊社では、トライアスロン用ウエア「Air Trisuits」の開発アドバイザリー、「PI TRI」のメンバーのレベルアップを図るパフォーマンスマネージャーをお願いしていますが、そのほかに取り組んでいる仕事は具体的にどのようなものがあるでしょうか。

北川麻利奈(以下北川):ブランドアンバサダーの立場で関わらせていただいているのは、パールイズミさん、ジャイアントの女性向けサイクリングブランドの「Liv(リブ)」、カナダのアスレティックウエアの「lululemo(ルルレモン)」、日本初のコールドプレスジュース専門店「SUNSHINE JUCE(サンシャインジュース)」(PI People vol.8)、スポーツ化粧品の「Athlete X(アスリートX)」の5つです。それに、フリーランスの編集者&ライターとして、ランニングメディアの「Runtrip(ラントリップ)」やビーチライフ スタイル マガジンの「HONEY(ハニー)」などで取材&執筆を行っています。

北川麻利奈

PI:当コラムにも執筆していただき、感謝しています。

北川:昨年から海外ブランドのスポーツ製品の取り扱いも始めました。2007年にイギリスで生まれた「Zone3」というマルチスポーツブランドです。ウエットスーツメインで、水着、トライスーツ、スイムアクセサリーなどのラインナップがそろっています。「Zone3」が日本で本格的に展開するにあたって、イギリス大使館から「トライアスロンのわかるキーマンを探している」という話があり、知人と共同経営でディストリビューターを引き受けました。今春から製品のデリバリーがスタートします。

北川麻利奈

PI:トライアスロンをやりながら、ブランドアンバサダー、編集者&ライター、ディストリビューターと、多岐に渡る仕事を同時進行させるのは大変そうですね。複数のプロジェクトに身を置く楽しさ、ツボとはどんなところでしょうか?

北川:私が「楽しいな」と思う瞬間は、いろんな人がつながって良いシナジーが起きていくことです。たとえば、先日、パールイズミさんに「lululemon」の方とお会いしていただきました。
ブランドごとに独自のレギュレーションがありますので、関係性がうまく発展しずらいこともありますが、「スポーツが好き」という同じマインドをもった人同士で、人間関係の輪が広がったのは確かなこと。それをとても心地よく感じています。

PI:新しい出会いというのは、コネクトしてくれる方がいないと意外と少ないもの。北川さんは、われわれがそれを補えるように、ソーシャルネットワークのリアル版をやってくれているんですね。

北川:そうかもしれませんね(笑)。流れのなかでどんな会話が生まれ、どんなコネクトができるだろうと事前に理想像もイメージするようにして、お会いしていただいています。編集&ライター業は、制作の方と既知の間柄だったりとか、好きなジャンルばかりなので、こちらも楽しく仕事させていただいています。自分が情報をアウトプットする場を持っていることは、アンバサダーを担当するブランドにとっても喜ばしいことだと思って、大切にしています。

ライフスタイルの一環として
新しいチャレンジとして、ミドルへ

PI:北川さんがトライアスロンを始めたのは、世界文化社でファッション誌を担当していた2012年と聞きました。以来、高校時代から23歳まで水球に打ち込んでいたこともあって(元水球アテネオリンピック強化選手)、アスリート魂に火がついたそうですね。

北川麻利奈

北川麻利奈

北川:はい。日本で最速のトライアスリートを決める日本選手権出場を目標に練習を積みました。男女約120名の選ばれし出場者のなかでフルタイムワーカーは1割以下。仕事をもつ方もトライアスロンのコーチといった関係者が多いなかで、私のようなディスクワークをしている人間がどこまで戦えるだろう、と。

2012~2016年までの5年間はオリンピックディスタンス一本でした。
ゴールスプリントまで他の選手と競りながらスピードを追求し続けるレース展開も、自分の好みに合っていたのだと思います(日本選手権には2014年、2016年に出場を果たす)。

PI:ただ、昨年はオリンピックディスタンスより距離の長い、佐渡国際トライアスロンのミドルディスタンスにも出場されました。どんな心境の変化があったのでしょうか?

北川:オリンピックディスタンスの選手は、世界的に見ると「プロ選手=オリンピアン」という、その国の代表です。2020年の東京オリンピックが近づく日本でも、若い世代が激しく戦うフィールドになっています。いっぽうミドルやロングは、オリンピアンでなくても出場できるプロカテゴリーが設定されていて、年齢を重ねながら長く続ける方が大勢いらっしゃいます。

私もライフスタイルの一環として、もう少しイイ意味で肩の力を抜いてトライアスロンを続ける方向にそろそろ舵を切ろうかな、と。

もうひとつは、「とにかく新しいことにチャレンジしたい」という気持ちです。
私は距離にネガティブで、「80~100kmのバイクパートは長いな~。20kmのランも長いな~。いったい何を考えながら走ればいいのだろう?」と思ってしまうのですが(笑)、そんな距離ネガを、自分の中で楽しめるぐらいにまでトライアスロンを捉え直すつもりです。

PI:なるほど。トレーニング方法は変わりましたか?

北川:オリンピックディスタンスはスイムパートでほぼ勝負が決まってくるので、週4回、朝5時に起きて1週間で約20000m泳いでいました。バイクはスプリント練習が多く、ランもスピード力の強化がメイン。月間60~70kmほどしか走っていませんでした。

ミドルを目指すようになってからは、スイムの比率を大きく減らして、バイクとランに費やす時間を増やしました。
バイクは、これまで1回の練習は多くても70kmでしたが、現在は日常的に100kmは走ろうと決め、その練習中にインターバを行っています。ランは、「分厚い練習を積み重ねる」をコンセプトに週1~2回はポイント練習を取り入れています。

どちらも、ただ距離を走るだけでは力は伸びないので、中身のメニューの細分化にトライしながら進めています。

北川麻利奈

PI:今後のレースの予定は?

北川:5月の「アイアンマン70.3 セントレア知多半島ジャパン」、9月の「2018佐渡国際トライアスロンB大会」、10月の「アイアンマン70.3 サイパン」を考えています。

PI:いよいよ本格的に始動ですね。

北川:はい。先ほどお話ししたように、私は常に何か新しいことをやっていたい性格で、同じことの繰り返しが苦手なタイプ。「向上心が強い」と言えば聞こえがいいですが、強すぎると気持ちだけが前にいってしまい、目標が実現できないと心がモヤモヤしてしまうこともありました。

とはいえ、もう大人ですから、自分でちゃんと環境を整えることからやって、「ああしたい、こうしたい」という気持ちを思う存分に満たしたい。そういう選択をいま自分がすることが大切なんだと気づきました。その意識をもってミドルにチャレンジします。